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2025.12.21
相続登記に土地権利書は不要?紛失時の原則と例外ケースを解説
親が亡くなり、実家などの不動産を相続することになったものの、遺品を整理しても大切な「権利書」が見つからない。
そんな状況に直面し、「もしかして、このままでは不動産の名義変更ができないのでは?」と不安に感じていらっしゃる方もいるかもしれません。
権利書は一度しか発行されない重要な書類だと聞くと、なおさら心配になりますよね。
しかし、結論からお伝えすると、権利書を紛失していても、多くの場合、相続による不動産の名義変更(相続登記)は可能です。
今回は、権利書がない場合の相続登記について、その理由や必要な手続き、書類についてご紹介します。
土地権利書を紛失しても相続登記はできる?
原則として権利書なしで登記できる
まず、一般的に「権利書」と呼ばれている書類には、2006年頃までに発行されていた「登記済証(とうきずみしょう)」と、それ以降に発行されるようになった「登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)」の2種類があります。
どちらも不動産の所有者であることを示す大切なものですが、相続登記においては、これらの権利書がなくても原則として手続きを進めることができます。
なぜなら、不動産の売買や贈与とは手続きの性質が異なるからです。
例えば、不動産を売却する場合、売主と買主が共同で登記申請を行います。
このとき、法務局は「本当に売主が自分の意思で不動産を売ろうとしているのか」を確認するために、売主が持っている権利書の提出を求めます。
一方、相続の場合は、不動産の所有者であった方(被相続人)はすでに亡くなっています。
そのため、相続人が単独で登記申請を行うことになります。
法務局は、権利書の代わりに「戸籍謄本」などの公的な書類によって、亡くなった事実と、申請者が正当な相続人であることを確認します。
このように、相続関係が戸籍で明確に証明できるため、原則として被相続人の権利書は不要とされているのです。
住所の変遷が証明できない場合は必要
ただし、「原則不要」には例外があります。
それは、被相続人の登記簿上の住所と、亡くなったときの最終住所とのつながりが公的な書類で証明できないケースです。
法務局は、登記簿に記載されている所有者と、亡くなった被相続人が同一人物であることを「氏名」と「住所」で確認します。
しかし、被相続人が不動産を取得してから何度も引っ越しを重ねていたり、登記したのが何十年も前だったりすると、住所の変遷を証明する「住民票の除票」や「戸籍の附票(ふひょう)」が役所の保管期間を過ぎて破棄されていることがあります。
(※以前は役所での保管期間が5年と短かったため、古い記録は残っていない場合があります。
現在は150年に延長されましたが、改正前に破棄された書類は取得できません。)
このように住所のつながりを証明できない場合、法務局は「本当にこの不動産の所有者は、亡くなった被相続人で間違いないか」を慎重に判断する必要があります。
その際の補完的な本人確認資料として、不動産を取得したときに発行された権利書(登記済証)の提出を求められることがあるのです。
権利書を紛失しても所有権は失われない
ここで最も大切なことをお伝えします。
たとえ権利書を紛失してしまったとしても、その不動産の所有権がなくなるわけではありません。
権利書は、あくまで登記手続きの際に本人確認などのために使われる書類であり、所有権そのものを証明する唯一の証拠というわけではないのです。
登記簿に所有者として記録されている限り、あなたの権利が失われることはありませんので、ご安心ください。
ただし、権利書は非常に重要な書類であることに変わりはなく、紛失しても再発行は一切できません。
将来、その不動産を売却したり、担保に入れたりする際には、権利書に代わる別の手続きが必要になり、手間や費用がかかることもあります。
見つからない場合は、まず遺品の中を丁寧にもう一度探してみることをお勧めします。
権利書なしでの相続登記に必要な書類は?
被相続人と相続人を証明する戸籍謄本が必要
権利書が不要な場合、相続登記にはどのような書類が必要になるのでしょうか。
最も基本となるのが、被相続人と相続人の関係を証明するための戸籍謄本です。
具体的には、以下のものが必要となります。
・被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)
・相続人全員の現在の戸籍謄本
被相続人の戸籍を出生まで遡ってすべて集めることで、法的に誰が相続人になるのかを確定させます。
この作業は、相続手続きの中でも特に時間と手間がかかる部分です。
住所証明や遺産分割協議書も揃える
戸籍謄本のほかにも、状況に応じてさまざまな書類が必要になります。
一般的に必要となる主な書類は以下の通りです。
・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
登記簿上の住所と最終住所のつながりを証明します。
・不動産を取得する相続人の住民票
新しく名義人になる方の住所を証明します。
・固定資産評価証明書
登記にかかる税金(登録免許税)を計算するために必要です。
・遺産分割協議書
相続人全員で遺産の分け方を話し合って決めた場合に作成します。
この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に押した印鑑が本人のものであることを証明します。
もし遺言書がある場合は、遺産分割協議書に代わって遺言書が登記の原因を証明する書類となります。
住所がつながらない場合は上申書で対応する
では、「住所の変遷が証明できず、権利書も紛失している」という最も複雑なケースでは、どうすればよいのでしょうか。
この場合でも、登記を諦める必要はありません。
対処法の一つとして、「上申書(じょうしんしょ)」という書類を作成する方法があります。
これは、「登記簿上の所有者は、亡くなった被相続人に間違いありません」という内容を相続人全員で証明し、法務局に提出する書類です。
上申書には、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。
その他にも、固定資産税の納税通知書など、被相続人が所有者であったことを推測させる資料を添えることもあります。
ただし、これらの書類で登記が認められるかは法務局の判断となり、手続きは非常に複雑になります。
このような状況に陥った場合は、ご自身で判断せず、速やかに登記の専門家である司法書士に相談することをお勧めします。
まとめ
親から相続した土地や家の権利書が見つからなくても、相続登記は原則として可能です。
権利書を紛失したからといって、不動産の所有権が失われるわけではないので、まずは落ち着いてください。
ただし、被相続人の住所の変遷が公的書類で証明できない場合には、例外的に権利書の提出を求められることがあります。
もし住所の証明ができず、権利書も見つからないという場合は、「上申書」などの特別な書類を作成して対応することになりますが、手続きは複雑化します。
2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続の開始を知った日から3年以内に申請しなければならなくなりました。
手続きが面倒だからと先延ばしにせず、早めに着手することが大切です。
もし手続きに少しでも不安を感じるようであれば、専門家である司法書士に相談することで、スムーズかつ確実に名義変更を進めることができるでしょう。


