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2025.12.05
第三者への遺贈は税金が高い?相続税2割加算や不動産コストの注意点
お世話になった方や親しい友人など、法律上の相続人ではない「第三者」に財産を残したいと考える方は少なくありません。
その想いを実現する方法の一つが、遺言によって財産を譲る「遺贈」です。
しかし、この遺贈には税金の問題が伴います。
せっかくの想いが、税金の知識がなかったために相手の負担になってしまっては元も子もありません。
事前にどのような税金がかかるのか、どんな点に注意すべきかを理解しておくことがとても大切です。
今回は、第三者へ遺贈する際にかかる税金の種類や、相続税に関する注意点についてご紹介します。
□第三者への遺贈でかかる税金の種類は?
第三者に財産を遺贈する場合、いくつかの税金が関係してきます。
財産の種類によってかかる税金も異なるため、一つずつ確認していきましょう。
*贈与税ではなく相続税が課される
「個人から個人へ財産を渡すのだから贈与税では?」と考える方もいるかもしれませんが、遺贈は亡くなったことをきっかけに効力が発生するため、贈与税ではなく「相続税」の課税対象となります。
生きている間に財産を渡すのが「贈与」、遺言によって亡くなった後に渡すのが「遺贈」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
したがって、遺贈によって財産を受け取った人(受遺者)は、その財産の価額に応じて相続税を納める必要があります。
ただし、受け取った財産の総額が相続税の基礎控除額(後述します)を下回る場合は、相続税はかからず申告も不要です。
*不動産の場合は不動産取得税と登録免許税も発生する
遺贈する財産が土地や建物といった不動産の場合、相続税に加えて以下の2つの税金がかかる点に注意が必要です。
・不動産取得税
不動産を取得した際に一度だけ課される税金です。
通常、相続によって法定相続人が不動産を取得した場合には課税されませんが、法定相続人ではない第三者が「特定遺贈(特定の不動産を指定して遺贈すること)」によって不動産を受け取った場合は、不動産取得税が課税されます。
・登録免許税
不動産の所有者が変わったことを示す「所有権移転登記(名義変更)」の際に課される税金です。
この税金は法定相続人でも第三者でもかかりますが、税率が大きく異なります。
法定相続人が相続で取得した場合の税率は不動産評価額の0.4%ですが、第三者が遺贈で取得した場合は2.0%と、5倍もの負担になります。
*法人への遺贈ではみなし譲渡所得税がかかる場合もある
個人ではなく、NPO法人や株式会社などの法人に遺贈するケースも考えられます。
このとき、遺贈する財産に不動産や株式などが含まれ、その価値が取得した時よりも値上がりしている(含み益がある)場合、「みなし譲渡所得税」が課されることがあります。
これは、実際に売却していなくても、時価で譲渡したものとみなして、値上がり益に対して所得税が課税される制度です。
特に注意したいのは、この税金を納める義務があるのは、財産を受け取った法人ではなく「亡くなった方の相続人」であるという点です。
相続人は財産を一切受け取っていないにもかかわらず、税金の支払い義務だけを負うという事態になりかねないため、法人への遺贈を検討する際は極めて慎重な判断が必要です。
第三者へ遺贈する際の相続税に関する注意点は?
第三者が遺贈を受ける場合、法定相続人が相続する場合と比べて、相続税の計算上でいくつか不利になる点があります。
主な注意点を3つ見ていきましょう。
相続税額が2割加算される
亡くなった方の配偶者と一親等の血族(父母、子)以外の人が財産を受け取った場合、その人が納めるべき相続税額が2割加算されるというルールがあります。
これを「相続税額の2割加算」といいます。
第三者はもちろん、法定相続人であっても兄弟姉妹や甥・姪が財産を受け取る場合もこの対象となります。
同じ価額の財産を受け取ったとしても、法定相続人である子と第三者とでは、最終的な納税額に大きな差が生まれることを知っておきましょう。
基礎控除の計算や非課税枠の適用が制限される
相続税には、課税対象となる財産額を減らすことができる「基礎控除」という制度があります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という式で計算されます。
ここで重要なのが、財産を受け取る第三者は、この計算式の中の「法定相続人の数」には含まれないという点です。
例えば、法定相続人が子1人のみで、お世話になった友人1人に遺贈した場合でも、「法定相続人の数」は1人のままであり、基礎控除額は増えません。
また、生命保険金や死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠がありますが、この恩恵を受けられるのは法定相続人のみです。
第三者が受遺者としてこれらの財産を受け取っても、非課税枠は適用されません。
こうした制限により、課税対象となる財産額が増え、結果的に税負担が重くなる可能性があります。
申告と納税は死亡を知った翌日から10ヶ月以内に行う
相続税の申告と納税には期限があります。
財産を受け取った人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、税務署へ申告書を提出し、税金を納めなければなりません。
この10ヶ月という期間は、長いようで意外と短いものです。
その間に財産の調査や評価、必要書類の収集など、多くの手続きを進める必要があります。
期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして延滞税などが課されるため、計画的に準備を進めることが大切です。
まとめ
第三者への遺贈は、法定相続人以外の方へ感謝の気持ちを形にする素晴らしい方法です。
しかし、その際には贈与税ではなく「相続税」が基本となり、不動産の場合は不動産取得税や登録免許税といった追加の税負担も発生します。
さらに、相続税の計算においては、税額が2割加算されたり、基礎控除や非課税枠の適用が制限されたりと、法定相続人と比べて税負担が重くなる傾向があります。
申告と納税は10ヶ月以内という期限も定められています。
大切な想いをスムーズに実現するためにも、これらの税金の仕組みを事前に理解しておくことが不可欠です。
ご自身での判断が難しいと感じた場合は、税理士などの専門家に相談し、最適な方法を検討することをおすすめします。


